このページの要点
- 防犯目的だけなら目的が明らかとされる場合(21条4項4号)があるが、作動中の掲示などの措置が要る。別の目的に使うなら、目的を示して同意を取る。
- 映像が個人情報にとどまるか、個人データ・保有個人データに当たるかで、義務の重さが変わる。日時でしか検索できない録画の整理に注意する。
- 保存期間は、自動の上書きなど実際の仕組みと一致させる。警察等への提供は、相手・根拠・範囲を確かめ、経緯を記録する。
- オンライン面談・通話の録画録音は、録る前に目的と保存を伝える。要配慮個人情報が含まれ得るなら同意が要る。
結論:カメラの映像も録音の音声も個人情報になり得る。取る以上は、目的を示し、保存と提供のルールを決める
防犯カメラや、オンライン面談・通話の録画録音は、顧客向けの文章(プライバシーポリシー)から外されやすい取得経路です。入力フォームや問診票と違い、本人が何かを書き込むわけではないからです。しかし、特定の個人を識別できる映像や音声は、個人情報に当たります(個人情報保護法2条1項)。個人情報を取得すれば、利用目的をできる限り特定し(17条1項)、取得した後は速やかに本人に通知または公表する(21条1項)のが、原則です。
ただし、カメラについては、この原則に例外があります。21条4項4号は、取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合には、1項から3項までの通知・公表・明示を要しないと定めています。個人情報保護委員会のQ&Aには、従来型の防犯カメラについて、防犯目的であることが設置状況から明らかな場合は、この「取得の状況からみて利用目的が明らか」に当たり、利用目的の通知・公表は不要と考えられるとする項目があります。同じ項目は、カメラで撮影されていることを本人が容易に認識できない場合には、作動中であることの掲示などで認識できるようにする必要がある旨、外観上明らかな場合でも掲示が望ましい旨も述べています。原文は、個人情報保護委員会のウェブサイトのQ&Aで確認してください。
- 防犯目的だけで使うなら、目的は設置状況から明らかとされる場合がある。ただし、撮影されていることを本人が容易に認識できない場合は、作動中であることの掲示などの措置が要り、外観上明らかな場合でも掲示が望ましい。
- 防犯以外の目的、たとえば店内の混雑の把握、接客の記録、広告への利用に使うなら、その目的を特定して示し、必要な同意を取る。
- 保存期間は、利用の必要性を考えて決める。上書きで消えるのか、手動で消すのかを、実際の仕組みで確かめる。
- 警察などから映像の提供を求められたときの扱いを、あらかじめ決めておく。
- オンライン面談や通話の録画録音は、録る前に目的を伝える。相手に黙って録るのは、不適正な取得になり得る。
このページが扱うのは、お客様、来訪者、利用者の映像と音声に限ります。取得する経路の全体像は情報の棚卸しで整理していますので、先にそちらで、カメラや録音が経路のどこに位置するかを確かめておくと、書き分けやすくなります。
映像は「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」のどれか
映像の扱いを考えるとき、最初につまずくのは、どの段階の情報として扱われるのか、という点です。個人情報保護法は、同じ情報でも、整理のされ方によって、義務の重さを変えています。個人情報は、生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるものです(2条1項)。個人データは、個人情報データベース等を構成する個人情報(16条3項)。保有個人データは、事業者が開示や訂正などの権限を持つ個人データです(16条4項)。
映像の段階(一般的な整理)
個人情報特定の個人を識別できる映像・音声。取得の際の目的の特定、適正な取得、利用目的の範囲での利用が求められる。
個人データ特定の個人の映像を検索できるように体系的に整理されたデータベース等を構成するもの。安全管理措置、第三者提供の制限などが加わる。
保有個人データ事業者が開示などの権限を持つ個人データ。開示・訂正・利用停止の請求の窓口の公表が加わる。
段階が進むほど、事業者の義務が増えます。
個人情報保護委員会のQ&Aには、特定の個人を識別できる映像は個人情報であるが、特定の個人の映像を検索できるように体系的に構成されていなければ、個人情報データベース等には該当しない、とする項目があります。録画した映像を日時でしか探せない仕組みなら、該当しないと解されるという趣旨です。この場合、映像は個人データではなく、個人情報にとどまります。したがって、安全管理措置の条文(23条)や第三者提供の制限(27条)は、映像そのものには直接かからない可能性があります。
ただし、これで義務が軽くなると考えて、扱いを雑にするのは適切ではありません。個人情報にとどまる場合でも、利用目的の特定(17条)、目的外の利用の制限(18条)、偽りその他不正の手段による取得の禁止(20条1項)、取得時の通知等(21条)は、かかります。また、映像から特定の人を検索できる仕組み、たとえば顔の特徴で人を探せる機能を使っているなら、状況は変わります。事業者としての全体の扱いは、全体の地図に示した段階の見分け方で、整理してください。
掲示の書き方:場所、文面、問い合わせ先
防犯カメラの掲示は、「カメラが作動中であること」を本人が気づけることが第一の目的です。そのうえで、目的や管理者、問い合わせ先を添えると、より親切な掲示になります。設置場所によって、見せ方は変わります。入口や受付など、来訪者が必ず目にする場所に置くのが基本で、出入口が複数あるなら、それぞれに置くことを考えます。
入口・受付に掲げる掲示の文面の例
防犯カメラ作動中
防犯と安全の確保のため、店内・駐車場を撮影・録画しています。録画した映像は、一定の期間、鍵のかかる場所で保管し、期間が過ぎたら消去します。
映像の取扱いについての問い合わせは、受付までお声がけください。詳しくは、当店のウェブサイトのプライバシーポリシーをご覧ください。
撮影の範囲、保管の場所、問い合わせの窓口を、実際の運用に合わせて書き換えてください。掲示とポリシーの内容が食い違わないことが大切です。
ウェブサイトのプライバシーポリシーには、掲示で書ききれない事項を補います。具体的には、撮影の目的、撮影する場所(館内、駐車場など)、保管の期間、映像を見ることができる範囲、警察などへの提供の考え方、問い合わせ先です。掲示は短く、ポリシーは詳しくという役割分担にします。
書き方の例(一般的な例) 防犯カメラの書き方
目的の書き方
理由「事業のため」では、何に使うかが分からず、後から目的を広げやすい。防犯と事故の確認と、範囲を限る。
保存の書き方
理由「必要な期間」だけでは、実態が見えない。上書きの仕組みと、例外の保存の場合を分けて書く。
掲示の有無
理由撮影を本人が認識できる状態にするのは、不適正な取得を避けるうえでも重要。
施設を貸し出す事業や、複数の事業者が使う場所では、映り込む人の範囲が広がります。貸し出す側と借りる側のどちらがカメラの管理者なのか、映像を誰が見られるのかを、利用の案内に書いておきます。館内の利用者どうしの映り込みや、利用者が自分で撮影する場合の取扱いは、撮影のルールとして、利用規約や案内に置く事項です。ポリシーは、事業者が取得する映像に絞って書きます。
保存期間と消去:書いた期間と実際の仕組みを一致させる
映像の保存期間は、機器の仕様で自動的に決まっていることが少なくありません。録画装置の容量が一杯になると、古い映像から上書きされて消える仕組みです。この場合、ポリシーに固定の日数を書くと、実際の挙動と合わなくなることがあります。容量や録画の設定によって、残る期間が変わるからです。
個人情報保護法22条は、利用する必要がなくなったときは、個人データを遅滞なく消去するよう努めなければならないと定めます。個人情報保護委員会のQ&Aには、カメラ画像などの保有期間について、利用の必要性を考慮して保存期間を設定し、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努める、とする項目があります。映像が個人データに当たらない場合でも、考え方としては参考になります。映像の保存期間は、防犯や事故の確認という目的に照らして、確認に必要な時間を考えて決めます。
確認の問い保存期間を決める前に確かめる問い
映像は、録画装置の中だけに残りますか。ほかの場所、たとえばクラウドや持ち出しの記録媒体に複製しますか。
理由複製が増えるほど、消去の漏れが生じやすい。複製の先もポリシーに書く対象になる。
装置は、古い映像から自動で上書きしますか。何日分が残る設定ですか。
理由自動で上書きされるなら、固定の日数でなく「自動的に上書きされる」と書くほうが実態に合う。
事故や被害の申出があったとき、その場面の映像を、別に保存する運用はありますか。
理由例外の保存があるなら、その場合と期間、消去の時期を決めておく必要がある。
クラウドの録画サービスを使っているなら、サービス側にも映像が保存されますか。
理由サービス側が映像を取り扱う場合は、委託や外国への提供の整理が要るため。区分は外部サービスのページで確かめる。
映像を扱うサービスの区分、つまり、委託に当たるのか、提供先が外国にある場合はどうなるのか、といった整理は外部サービスの区分で扱っています。保管と安全管理措置の一般的な書き方は保管期間・消去・安全管理措置の書き方で説明しています。
警察などから映像の提供を求められたとき
防犯カメラの映像について、実際に問題になりやすいのが、警察などから提供を求められる場面です。映像が個人データに当たる場合、本人の同意なく第三者に提供することは、27条1項の例外に当たらない限り許されません。例外の中で、この場面に関係するのは、1号の「法令に基づく場合」と、4号の「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」です。
刑事訴訟法197条2項は、捜査については、公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができると定めています。この規定に基づく照会(捜査関係事項照会)に応じる場合は、一般に「法令に基づく場合」に当たると整理されています。一方、文書による照会ではなく、任意の協力として映像を求められた場合は、4号の要件に当たるかどうかを個別に検討することになります。どの場合も、求めてきた相手、根拠、提供する範囲を確かめ、記録を残すのが基本です。
提供の記録については、個人データを第三者に提供したときは、提供の年月日、相手の氏名または名称などの記録を作成し、一定の期間保存しなければなりません(29条)。ただし、提供が27条1項各号に当たる場合は、この記録の作成は不要とされています(29条1項ただし書)。記録を作らなくてよい場合でも、後から経緯を説明できるよう、内部の記録は残しておくのが実務的です。
提供を求められる場面の整理
文書による照会
起きがちなこと捜査機関から、根拠の条文を示した文書で、映像の提供を求められる。
整え方根拠と範囲を確かめ、提供の経緯を内部に記録する。ポリシーには、法令に基づく場合に提供することがあると書く。
口頭の依頼
起きがちなこと電話や来店で、口頭で映像を見せてほしいと言われる。
整え方求めてきた者の所属と根拠を確かめる。応じるかどうかは、個別に判断する。
被害者からの依頼
起きがちなこと被害を受けたという来訪者が、映像を見せてほしいと求める。
整え方映像には他の人も映る。提供の相手と範囲、映り込む人への配慮を考える。
目的外の利用と顔識別機能:防犯の映像を別の目的に使う前に
防犯のために撮った映像を、別の目的、たとえば店内の混雑の把握、来店者の属性の分析、広告や販促の素材として使いたくなることがあります。個人情報保護法18条1項は、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならないと定めています。個人情報保護委員会のQ&Aには、防犯目的で取得した画像や顔の特徴データを、マーケティングなどの商業目的で利用する場合は、あらかじめ本人の同意が必要とする項目があります。防犯だけを目的とした掲示で撮った映像を、販促に回すのは、この考え方に反することになります。
顔の特徴を使って人を識別する機能のあるカメラは、さらに慎重な扱いが要ります。Q&Aには、顔識別機能付きカメラでは、利用目的に防犯目的であることに加えて顔識別機能を用いることも明示する必要があり、外観から顔識別が行われていることを認識しにくいため、通知または公表が必要とする項目があります。登録の基準を厳格に定めること、運営者や問い合わせ先を掲示することが望ましい、という趣旨も示されています。顔の特徴を使う仕組みを入れるなら、導入の前に、原文を読み、設計を見直すことが望ましいです。
映像の使い方による扱いの違い(一般的な整理)
| 使い方 | 目的の示し方 | 同意の要否の考え方 |
|---|---|---|
| 防犯・事故の確認のみ | 設置状況から明らかな場合がある。掲示とポリシーで補う。 | 目的の範囲内の利用であれば、原則不要。 |
| 混雑の把握 | 防犯とは別の目的として特定して示す。 | 映像を個人の識別のない形で集計するのか、個人情報として扱うのかで変わる。 |
| 販促・広告への利用 | 目的として明示する。 | 防犯目的で取得した映像の商業利用は、あらかじめ同意が必要とされる。 |
| 顔の特徴による識別 | 防犯目的に加えて、顔識別を用いることを明示する。 | 導入前に、登録の基準と運用を設計し、Q&Aの原文を確認する。 |
オンライン面談・通話の録画録音:録る前に目的を伝える
お客様との相談、説明、受講を、オンラインの面談や通話で行う事業では、記録のために録画や録音をすることがあります。音声や映像は、特定の個人を識別できれば個人情報です。録音は、お客様が気づかないうちに行われることもあり、その場合は、偽りその他不正の手段による取得(20条1項)になり得ます。録る前に、録画録音をすること、その目的、保存の期間を、お客様に伝えます。
通知の方法は、場面に合わせて選べます。予約や申込みの段階で案内する方法、面談の冒頭に口頭で伝えて承諾を確認する方法、画面に録画中であることを表示する方法などです。相手が書面に入力する場面、たとえば申込みフォームの中で録画録音に触れるなら、取得前の明示(21条2項)の考え方にも合います。冒頭で伝えるだけでなく、申込みの時点で案内しておくほうが、お客様は事前に判断できます。
面談の案内に載せる文の例
オンライン面談は、記録のために録画・録音する場合があります。録画・録音は、相談内容の確認と、ご案内の品質の向上のために使います。
録画・録音を希望されない場合は、面談の開始前にお知らせください。録画・録音をせずに実施します。
録画録音の目的、保存の期間、断れるかどうかを、実際の運用に合わせて書き換えてください。断れない運用なら、その旨を事前に伝える必要があります。
録音の内容に、健康状態や病歴など、要配慮個人情報(2条3項)が含まれ得る場合は、取得にあたって本人の同意が必要です(20条2項)。心身の状態の相談を受ける事業で録音をするなら、健康相談サービスのプライバシーポリシーの同意の取り方も、あわせて確認してください。また、録音を外部の文字起こしや要約のサービスに送る場合は、委託や外国への提供の整理が加わります。
録画録音したデータの保存は、映像と同じく、目的に照らして期間を決め、不要になったら消します。面談の内容を文字に起こした後は、元の音声を消すのか、残すのかを決めておくと、運用が簡潔になります。
起きがちなこと
防犯カメラ・録画録音で起きがちなこと
- ポリシーに「防犯カメラを設置しています」とあるのに、現場には作動中の掲示がない。
- 防犯目的の掲示で撮った映像を、販促の資料や広告に使っている。
- 保存期間を固定の日数で書いているが、実際は容量の都合で上書きされ、残る期間が日によって違う。
- 警察などへの提供の扱いが決まっておらず、求められたときに現場の判断で渡している。
- クラウドの録画サービスを使っているのに、映像の保存先がポリシーに書かれていない。
- オンライン面談を録画録音しているのに、事前の案内がない、または冒頭の一言だけで済ませている。
- 録音から文字起こしをする外部サービスを使っているのに、委託や外国への提供の整理がされていない。
よくあるご質問
防犯カメラを付けたら、必ず利用目的をポリシーに載せなければなりませんか?
特定の個人を識別できる映像は個人情報であり、利用目的の特定が必要です(個人情報保護法17条1項)。通知や公表については、取得の状況からみて利用目的が明らかと認められる場合は不要とされています(21条4項4号)。個人情報保護委員会のQ&Aは、防犯目的であることが設置状況から明らかな場合は、これに当たると考えられるとしています。ただし、撮影されていることを本人が容易に認識できない場合は掲示などの措置が求められ、外観上明らかな場合でも掲示が望ましいとされています。ポリシーにも補足を置くのが実務的です。防犯以外の目的に使うなら、目的を示して必要な同意を取ります。
防犯カメラの映像の保存期間は、何日が適切ですか?
法律に、映像の保存期間の定めはありません。22条の趣旨に沿って、防犯や事故の確認という目的に照らして必要な期間を設定し、不要になったら遅滞なく消去するよう努めます。録画装置が自動で上書きする仕組みなら、固定の日数を書くより、自動で上書きされることを書くほうが、実態に合います。事故や被害の申出があったときの例外の保存も、決めておきます。
警察から映像を見せてほしいと言われたら、応じてよいですか?
映像が個人データに当たる場合、本人の同意なく第三者に提供できるのは、27条1項の各号に当たるときです。刑事訴訟法197条2項に基づく照会に応じる場合は、一般に「法令に基づく場合」(1号)に当たると整理されています。任意の協力の場合は、4号の要件に当たるかを個別に検討します。どの場合も、相手と根拠、範囲を確かめ、経緯を記録しておくのが基本です。
オンライン面談を録画するとき、お客様の同意は必要ですか?
個人情報保護法は、録画録音そのものに、一律の同意を求めてはいません。ただし、録画録音を黙って行えば、不正の手段による取得(20条1項)になり得ます。目的を伝え、利用目的を通知または公表する(21条1項)のが基本です。内容に健康状態など要配慮個人情報が含まれ得る場合は、取得にあたって本人の同意が必要です(20条2項)。
防犯カメラの映像を、店内の混雑の分析に使ってもよいですか?
防犯とは別の目的ですので、その目的を特定して示す必要があります。防犯目的で取得した画像をマーケティングなどの商業目的で利用する場合は、あらかじめ本人の同意が必要とするQ&Aの項目があります。個人を識別しない形で人数だけを数える仕組みにするのか、映像を個人情報として分析するのかで、整理が分かれます。設計を決めてから、目的の書き方を検討します。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の事業への当てはめは、取り扱う情報の種類やサービスの仕組みによって異なることがあります。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 個人情報保護委員会 / 総務省